局所座標系のはなし
STEP3:弾性方程式の離散化(後編)
弾性方程式の離散化
前編で述べたようにある構造物に仮想変位が生じているとしてもその構造物がつりあいの状態にあるとみなすことができるので、 が成り立ちます。このとき外力によって仮想変位を生じたとすると、この外力の仮想仕事量は、 ですから、両式を式に代入すると、 となります。これは任意の仮想変位についてなり立たなければならないので、 が得られます。応力を節点変位で表した式 を代入すると式は、 となります。したがって と置くことにより、式は、 と表され、これが要素について弾性方程式を離散化した式となっています。
数値積分法
各要素の節点変位は式で定義されましたが、この積分方程式をコンピュータで算出するために、Gaussの数値積分を活用します。式は直行座標系の式であるため、まずは前編で定義したBマトリクスの成分を局所座標系で表現する工夫が必要となります。これに伴って、各要素の体積(あるいは面積)積分の被積分領域も局所座標系に変換します。
局所座標への変換
節点の形状関数は、 であるため、1次偏導関数は、 と表わされます。したがってこれをマトリクス表示すると、 と表すことができます。上式で直交座標座標を形状関数を用いて局所座標で表現すると、は形状関数を用いて式によって定義されるため、式のJacobianマトリクスの成分は、 となります。したがってJacobianの逆行列が定まれば式からすぐさま、マトリクスの成分が求まることになります。そこで逆行列と行列式を求めると、 となるので、これらを次式 に代入することでマトリクスの成分は、 と定まり、これが局所座標系で表わされた式となっています。 次に、被積分領域を局所座標へ変換することについて論じます。まず、被積分領域が体積である場合、直行座標系で任意の座標を、 とすると局所座標の任意の座標は、 ですので、直行座標系の体積を局所座標系に変換したものは、座標において、 と表わされます。 次に被積分領域が面積である場合、直行座標系で と表わされるベクトルは、空間における局所座標平面を表します。そこで表面荷重のかかる要素面をこれにとると、平面上の点では、ですから、この面に応じた座標は、 と表すことができます。このとき、 と定義したとは空間における局所座標平面上の方向のベクトルと、方向のベクトルとなりますから、 とで張られる面の法線方向の成分は空間において、 で表されます(ただし方向はからに右ねじを回して進む向きです。そこでこの方向を方向としています)。これをベクトル表示したものを、 と定義しておきます。 このとき方向、方向、方向それぞれの単位ベクトルは座標において です。また、 ですから、式~を代入すると、 となり、これを平面に係る表面荷重の演算に用います。
Gaussの数値積分
Gaussの数値積分は多項式に対して、 のを最小にするように幾何対称を利用して表2.1のようにGauss point とその重みを定めるため、多項式の積分はGaussの数値積分によって厳密な解を得ることができます。 3次元問題においてはで十分であり、次の積分: を求めるにあたり、まず、、を固定したのみの関数とみて重みを考慮して、次に示すように内側の積分を行います。 すると、は、 となります。同様に、を固定してのみの関数とみると、 となります。この式に式を代入すると としてGaussの数値積分を表す式が得られます。表1にGauss Pointとその重みを示します。
表1 Gauss Pointとその重み
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1 |
0.00000 00000 00000 |
2.00000 00000 00000 |
2 |
0.57735 02691 89626 |
1.00000 00000 00000 |
3 |
0.77459 66692 41483 |
0.55555 55555 55555 |
0.00000 00000 00000 |
0.88888 88888 88889 |
4 |
0.86113 63115 94053 |
0.34785 48451 37454 |
0.33998 10435 84856 |
0.65214 51548 62546 |
5 |
0.90617 98459 38664 |
0.23692 68850 56189 |
0.53846 93101 05683 |
0.47862 86704 99366 |
0.00000 00000 00000 |
0.56888 88888 88889 |
要素剛性マトリクスと荷重ベクトルのGauss積分表示
前節では離散化された弾性方程式を式として示しました。この要素剛性マトリクスと荷重ベクトルを局座標変換してGauss積分にて表示し、コンピュータプログラムにセットできる状態まで、より具体的な展開を行います。
要素剛性マトリクス
要素剛性マトリクスについては被積分領域が体積ですから、式の変換により、 \label{64} と表わされます。マトリクスが、マトリクスがの行列ですから、上式の{ }の中身はの行列となっています。この行列を と表すと、その成分は、 で与えられます。このとき材料マトリクスとは、 と表されるものです。
荷重ベクトル
荷重ベクトルも被積分領域が体積ですから、式の変換により、 と表わされます。この行列を と表すと、その成分は、 で与えられます。なお、この荷重ベクトルは重力などの体積力によるものです。
表面荷重ベクトル
表面荷重ベクトルは、 のように局座標で表現できます。この被積分領域は面積ですから、式、、の変換により、平面に係る表面荷重は、 で与えられます。